会員制度を活用した顧客の囲い込みの重要性

ここ最近、会員制度を新たにスタートしたり、リニューアルしている企業を見かけます。これは新規客獲得の効率悪化から、既存客の囲い込みへの重要性の現れかと感じます。


会員制度の多くは、直近1年購入金額に応じたランクの設定と商品を購入するごとに金額に応じたポイント還元がベースになっています。貯まったポイントは、商品購入時の割引や用意されているプレゼントと交換できるのが一般的です。


ランク制度の中には直近の半年もしくは1年購入がないとランクが下がるといったものを多く見かけます。しかし、直近に購入が無いからとランクを下げるとその中には、長期購入者も含まれ、顧客の不満につながる可能性があります。


そこで、最近は、ランクを下げない、累計購入金額に応じたランクを設け、ポイント還元や特典を付与するようなケースが増えてきました。

 

会員制度の拡充で顧客満足度アップを目指す

健康食品通販会社A社、2022年からサービスをリニューアルし、累計購入金額によるランク制度を設けました。お客様にはランク毎の特典をわかりやすく表現したツールを送付し、サービスの理解を促しました。


特典は従来、誕生日特典と年1回のプレゼントでしたが、継続特典、ステージアップ特典、ポイント還元、各種体験イベントへの参加権利の付与と様々な特典を追加していきました。


誕生日特典は従来、自社商品を安く購入できるといったものでしたが、お客様が買いたい商品が無い場合は、この特典自体の魅力が半減します。そこで、ギフトからも選べるという特典を追加し、お客様は自社商品の購入かギフトかのどちらかを選ぶことができるようになりました。

 

化粧品通販会社B社は、ステージ判定の購入金額の計測期間を1年から2年に延長し、長く購入しているお客様ほどステージアップしやすいように変更をしました。


健康食品や化粧品の定期モデルの会社では、長く続けているお客様の中に直近の購入金額が低い方が存在します。これは、商品が余っているため、お休みサービスを利用しているからです。


直近の購入金額だけでお客様を評価する会社は、直近の購入金額が少ないが長年利益貢献してくれているお客様を切り捨ててしまう可能性があります。長くお付き合いのあるお客様は今後も買い続けてくれる可能性が高いものです。このようなお客様をいかに大切にし、失わないでいられるかがますます重要になってきています。

 

独自性のある会員制度で他社との差別化を図る

また、会員制度をいかに、独自性を持った企画にしてくかといった視点も大切です。


スポーツブランドのアディダスは、昨年、会員プログラムを刷新しました。商品購入、レビュー投稿により貯まるポイント数に応じて会員ランクが決まります。ランクが上がるにつれ、配送料が無料、会員限定商品の購入権利の獲得、人気商品の先行販売の対象になるといった特典が用意されています。


また、新たに特典として、アディダスならではの体験価値を提供する企画を取り入れました。例えば、2023年のニュージーランドラグビー代表「オールブラックス」の全選手の直筆サイン入りジャージや、プロバスケットボールチーム「アルバルク東京」の選手達のサイン入りユニフォームがもらえる企画の抽選に参加できます。


このような独自性のある企画は、アディダスが日頃から、スポーツ選手、チームなどのスポンサーを務めていることが背景にあります。莫大な費用を掛けずに実現ができるのはアディダスならではの強みと言えます。

 

社会が成熟し、今後、人口減少が見込まれる日本においては、直近の購入金額だけでお客様を評価するのではなく、長く利益貢献をしてくれいるお客様に視点を向けることが必要になっています。また、各社の強みを活かした独自性のある会員制度で他社との差別化を図ることが益々求められています。会員制度を設計する会社や見直しを考えている会社は単なる割引だけの制度にならないよう、自社の強みを意識して設計を考えてみてください。


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